家の軒下や屋根裏に、まだら模様の丸い巣ができている。ベランダのまわりを黄色いハチが何匹も飛んでいる。住宅地でこうした相談が特に多いのがキイロスズメバチです。
市街地でのスズメバチの相談はキイロスズメバチが圧倒的に多いとされ、人の暮らしに最も身近なスズメバチといえます。
本記事では、キイロスズメバチの生態を客観的に解説します。
キイロスズメバチとは?大きさ・見た目の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | キイロスズメバチ |
| 学名 | Vespa simillima xanthoptera(ケブカスズメバチの亜種で、本州以南のもの) |
| 分類 | 昆虫綱 ハチ目 スズメバチ科 |
| 体長 | 女王25〜30mm、働きバチ18〜25mm |
| 見た目 | 全体にオレンジ味の強い黄色。ほかのスズメバチより黄色の面積が多く、飛んでいるとほぼ濃い黄色一色に見える |
| 活動時期 | 3月の終わりごろから11月ごろまで。スズメバチの中では活動開始が早い |
| 働きバチの数 | 400〜1,400匹ほど |
キイロスズメバチの生態|巣・食性・1年の暮らし
巣:あらゆる場所に作り、引っ越しもする
樹木の茂み、木の洞、岩の割れ目のほか、軒下、屋根裏、床下、橋の下、看板の裏など、風雨を防げる場所ならどこにでも巣を作ります。巣はまだら模様の丸い形で、テニスボールほどの大きさから、大きいものでは直径40〜80cmほどになります。
巣を作った場所が狭くなると、広い場所へ引っ越す習性があります。夏に突然、軒下などに大きな巣ができるのはこのためです。
食性
ハエやアブ、トンボ、セミなどの昆虫やクモを狩り、ミツバチを襲うこともあります。成虫は果実、花の蜜、樹液を好みます。
スズメバチの1年
| 時期 | 巣の様子 |
|---|---|
| 4月下旬〜5月 | 冬眠から覚めた女王が、1匹で徳利(とっくり)を逆さにしたような形の巣を作り始める |
| 6〜7月 | 働きバチが生まれて数が増え、巣が球状になっていく |
| 8〜9月 | 最も活発になり、巣が最大になる。新しい女王を育て始める |
| 9月中旬ごろ | 新女王が生まれるころが最も危険な時期とされる |
| 10月以降 | 働きバチが減り、11月にはほぼいなくなる。新女王だけが冬を越す |
キイロスズメバチの女王は、柔らかめの朽ち木の中で冬を越します。秋に新しい女王とオスが生まれ、次の年の巣作りにつながります。
キイロスズメバチが家に巣を作る理由
キイロスズメバチは人家に近い環境に多く、屋根裏、軒下、床下、戸袋など、建物のすき間や囲まれた空間を巣作りに利用します。人と接する機会はオオスズメバチよりはるかに多いとされています。
キイロスズメバチによる被害・影響
攻撃性はオオスズメバチに次いで強く、巣に近づいただけで攻撃してくることがあります。刺される被害が最も多いスズメバチの一つです。屋根裏や壁の中に巣を作られると、外から見えないまま巣が大きくなることがあります。
キイロスズメバチがいるサイン
| サイン | 見られる場所・特徴 |
|---|---|
| 同じ場所を出入りするハチ | 軒下、換気口、屋根と壁のすき間など |
| まだら模様の丸い巣 | 軒下、ベランダの天井、庭木の中 |
キイロスズメバチに刺されないために
ハチ類に刺されて亡くなる人は毎年います。林野庁によると、ハチ刺されによる全国の死亡者数は2024年に18名でした。死亡事故のほとんどはアナフィラキシーショックによるもので、多くは刺されてから1時間以内に亡くなっていると考えられています。
刺されないための注意
- 黒いものを攻撃する習性があるため、白っぽい服装にする。長袖・長ズボン・帽子で肌を出さない
- 香水・化粧品・整髪料など、においの強いものを避ける
- 巣に近づかない・刺激しない。庭木の手入れの前に巣がないか確認する
- ハチが近づいてきたら、手で払わず、走らずに静かに後ずさりして離れる
- 虫よけスプレーは、刺すハチには効果がない
刺されたときの目安
刺されたら、口で吸い出さずに毒を絞り出し、流水で冷やします。アンモニアや尿を塗るのは有害です。じんましん、発熱、嘔吐、息苦しさなど全身に症状が出たら、救急車を呼ぶなどしてすぐに医療機関を受診してください。過去にハチに刺されてアレルギー反応が出たことがある人は、特に注意が必要です。
巣の駆除について
初期の小さな巣以外は、防護服などの装備を持つ専門業者による処理が必要とされています。大きな巣に自分で手を出すのは危険です。自治体によっては、相談窓口や駆除費用の補助制度を設けている場合があるので、お住まいの市町村にも確認してください。
キイロスズメバチの生存戦略|引っ越しで巣を大きくする
最初は狭い場所に小さな巣を作り、働きバチが増えて手狭になると、より広い場所に引っ越して巣を大きくします。場所を選ばず巣を作れることが、住宅地でも数を増やせる理由の一つです。
生態系での役割
ハエやアブなどの昆虫をたくさん狩るため、ほかの昆虫の数を抑える捕食者としての役割を持っています。
建物診断の視点|キイロスズメバチからわかる住まいの状態
屋根裏や壁の中に巣を作られる場合、ハチが出入りできるすき間が建物に開いていると考えられます。換気口の網の破れや、屋根と壁の取り合い部分のすき間などを確認するきっかけになります。
キイロスズメバチの危険度評価
※地域・環境により変動する相対的な目安です。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 人との接触 | ★★★★★(市街地での相談が最も多い) |
| 攻撃性 | ★★★★☆(オオスズメバチに次いで強い) |
| 巣の規模 | ★★★★★(働きバチ数百〜1,000匹超) |
| 建物への影響 | ★★★☆☆(屋根裏・壁の中への営巣) |
| 駆除難易度 | ★★★★★(巣が大きく見えない場所にもある) |
ほかのスズメバチとの見分け方
| 種類 | 見分けるポイント |
|---|---|
| キイロスズメバチ | 体長2〜3cmほど。全体に黄色っぽく見える。巣はまだら模様の丸型で、閉じた空間にも作る |
| オオスズメバチ | 女王は4cmを超える世界最大のスズメバチ。頭がオレンジ色。主に土の中に巣を作る |
| コガタスズメバチ | キイロスズメバチと同じくらいの大きさ。腹部のしま模様が目立つ。初期の巣は徳利を逆さにした形 |
