夜、明かりのついた窓の網戸やサッシに、緑色の体に茶色い羽のカメムシがとまっている。年によっては、果樹の産地で注意報が出るほど数が増えることもあります。こうした場面でよく見られるのがチャバネアオカメムシです。
ナシやモモ、カキなどの果実を吸う「果樹カメムシ」の代表的な種類で、スギやヒノキの実(球果)を食べて増えます。兵庫県でも、県内全域を対象にした注意報がたびたび出されています。
本記事では、チャバネアオカメムシの生態を客観的に解説します。
チャバネアオカメムシとは?大きさ・見た目の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | チャバネアオカメムシ(茶翅青亀虫) |
| 学名 | Plautia stali |
| 分類 | 昆虫綱 カメムシ目 カメムシ科 |
| 体長 | 10〜12mm |
| 見た目 | 光沢のある緑色の体に、茶色の前翅(はね)。秋には全体が茶色の「褐色型」も現れる |
| 分布 | 日本全土(北海道から南西諸島まで) |
| 活動時期 | 4〜10月ごろ |
チャバネアオカメムシの生態|エサ・増え方・1年の暮らし
スギ・ヒノキの実で増える
夏ごろにスギやヒノキの林へ移り、球果(いわゆる松ぼっくりのような実)を吸いながら盛んに繁殖します。特にヒノキの球果が重要なエサとされています。サクラやクワなども食べます。
山のエサがなくなると果樹園へ
球果の吸い跡が増えてエサとして使えなくなると、成虫は林を離れて果樹園へ飛んでいきます。ナシ、リンゴ、カキ、モモ、温州ミカンなどの果汁を吸い、吸われた部分はへこんで果肉がスポンジ状になります。主に日没後に飛んできて加害するとされています。
1年の暮らし
| 時期 | 様子 |
|---|---|
| 4月ごろ | 落ち葉の下などで冬を越した成虫が活動を始める |
| 夏 | スギ・ヒノキ林へ移り、球果をエサに繁殖する |
| 夏〜秋 | 球果を食べ尽くすと果樹園や人里へ飛来する |
| 晩秋 | 越冬場所となる落葉樹林へ移る。年に1〜3回発生する |
チャバネアオカメムシが家のまわりに来る理由
農業の発生予察では、光で虫を誘う「予察灯」に集まった数を数えて発生量を調べています。夜に明かりへ飛んでくる性質があるため、住宅でも照明のついた窓や網戸、サッシに集まりやすくなります。
秋には、カメムシの仲間は越冬場所を探して窓のすき間や換気扇口から室内に入ることがあり、2〜3mmのすき間からでも入りこむとされています。
チャバネアオカメムシが増える年
発生量はスギ・ヒノキの球果の量に左右されます。前の年の夏の天候が球果の量に影響し、「晴れの日が多い暑い夏の翌年」は球果が豊作になりやすく、カメムシも増えやすいとされています。
兵庫県で出された注意報
| 発表時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年5月 | チャバネアオカメムシ・ツヤアオカメムシ・クサギカメムシの3種について県内全域に注意報 |
| 2024年8月 | 県内全域に注意報。フェロモントラップで7月〜8月上旬に捕れた数は加西市で7,252頭(表年の過去5年平均279頭)、朝来市で14,165頭(同648頭) |
| 2026年5月 | 同じ3種について県内全域に注意報。フェロモントラップで平年を大きく上回る数が捕れた |
注意報は果樹の生産者向けの情報ですが、発生が多い年は住宅のまわりで見かける数も増えやすくなります。
チャバネアオカメムシによる被害・影響
- 果樹の果汁を吸い、へこみや奇形果の原因になる
- 少しの刺激で臭いにおいの液を出す
- 洗濯物について汚れやにおいが移ることがある
- 照明に寄ってきて、網戸やサッシにとまる
人を刺したり血を吸ったりする虫ではありません。
チャバネアオカメムシがいるサイン
| サイン | 見られる場所・特徴 |
|---|---|
| 緑色に茶色の羽のカメムシ | 夜、明かりのついた窓・網戸・サッシ |
| 独特のにおい | 取り込んだ洗濯物、窓まわり |
| 果実のへこみ | 庭のカキ・ミカン・モモなど |
チャバネアオカメムシの対策と予防
自治体の資料では、カメムシ全般について次のような対策が案内されています。
- 窓や戸のすき間をすき間テープでふさぐ
- 入口や窓まわりの消してよい照明は消す。紫外線をカットした防虫ランプに替える
- 発生が多い時期は洗濯物を室内に干す
- 家のまわりの不要な草木を取り除く
- つぶさずにガムテープや紙で捕るか、殺虫剤を使う
チャバネアオカメムシの豆知識
秋には茶色くなる個体も
名前のとおり緑の体に茶色い羽が特徴ですが、秋には全体が茶色の「褐色型」も現れます。茶色だからといって別の種類とは限りません。
チャバネアオカメムシの生存戦略
山のスギ・ヒノキの球果で数を増やし、エサがなくなると果樹園や人里へ移動します。エサの量に合わせて住む場所を変えることで、豊作の年に一気に数を増やします。
天敵と生態系での役割
寄生バエのマルボシヒラタヤドリバエが天敵として知られています。寄生されると、およそ2週間後から生き残る割合が急に下がるとされています。
建物診断の視点
夜に照明がつく窓や玄関まわり、網戸の枠、サッシのすき間は、カメムシが集まり入りこみやすい場所です。照明の位置と、すき間の有無を合わせて確認すると対策を立てやすくなります。
チャバネアオカメムシの危険度評価
※地域・環境により変動する相対的な目安です。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 人との接触 | ★★★★☆(明かりに寄って網戸・窓に集まる) |
| においの不快さ | ★★★★☆(刺激すると強いにおいを出す) |
| 人への直接の害 | ★☆☆☆☆(刺さない・血を吸わない) |
| 発生量の年変動 | ★★★★★(球果の豊凶で大きく変わる) |
| 対策の難易度 | ★★☆☆☆(すき間対策と照明の工夫が中心) |
ツヤアオカメムシ・アオクサカメムシとの見分け方
| 種類 | 見分けるポイント |
|---|---|
| チャバネアオカメムシ | 体長10〜12mm。緑の体に茶色の前翅 |
| ツヤアオカメムシ | 体長14〜17mmと大きい。全体が油を塗ったような強い光沢の緑色で、やや丸い |
| アオクサカメムシ | 体長11〜17mm。全体が緑色。腹部の背面の付け根側が黒っぽい |
| ミナミアオカメムシ | 体長12〜16mm。アオクサカメムシによく似るが、腹部の背面が緑色 |
