天井裏で物音がする、台所に糞が落ちている、配線がかじられている。こうしたとき相手はたいていネズミですが、住まいに入り込む種類は三つに限られます。クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミです。この三つは体つきも、好む場所も、通り抜けられる隙間の大きさも違います。そして種類が違えば、罠を置く高さも、塞ぐべき場所も変わります。市販の毒餌を置いても減らないという相談の多くは、種類を取り違えたまま対処していることが原因です。
このページでは、姿をはっきり見ていなくても種類を絞り込めるように、見分け方と、建物側から見たときの違いをまとめます。
三種を一枚の表で比べる
| クマネズミ | ドブネズミ | ハツカネズミ | |
|---|---|---|---|
| 体つき | 細身 | 大型で頑丈 | 小型 |
| 尾 | 体より長い | 体より短い | ― |
| 好む場所 | 高い所。天井裏・壁の中 | 低い所。床下・水辺・水回り | 物置・倉庫まわり |
| 寿命 | 野生下でおおむね1〜2年 | 野生下でおおむね1〜2年 | 野生下でおおむね1年前後 |
| 妊娠期間 | 約3週間 | 約3週間 | 約20日前後 |
| 一度の出産数 | 数匹〜10匹前後 | 6〜10匹前後 | ― |
見分けるポイントは「上下」
クマネズミとドブネズミを分けるいちばん分かりやすい手がかりは、体の特徴よりも行動圏の上下です。ドブネズミは大型で頑丈、尾は体より短く、低い場所や水辺を好みます。クマネズミは細身で尾が体より長く、耳が大きく、高所を好みます。どこで音がしたか、どこに糞があったか、その高さを思い出せば、たいていは絞り込めます。
尾は補助的な決め手になります。尾を前に倒したときに体の長さを超えるならクマネズミ、途中までしか届かないならドブネズミです。ハツカネズミはこの二種と比べて明らかに小型なので、大きさだけで区別がつきます。
通り抜けられる隙間の大きさが違う
建物側から見たときにいちばん効いてくるのが、この違いです。クマネズミは直径1.5cm程度の隙間があれば通り抜けます。ハツカネズミはさらに小さく、6mm程度のわずかな隙間から入ります。つまり同じ家でも、種類によって「塞がなければならない穴」の基準が変わります。
クマネズミを想定して1.5cmの隙間を潰しても、相手がハツカネズミなら6mmの隙間から入り続けます。逆にハツカネズミの基準で建物中の6mm以上をすべて塞ごうとすれば、費用も手間も跳ね上がります。どこまで塞ぐかを決めるために、先に種類を確かめる意味があります。
クマネズミ|天井裏を走っているのはたいていこれ
住宅で問題になるネズミの中心はクマネズミです。細身で身軽、垂直の壁や配管を伝って高い場所へ移動できるため、天井裏や壁の中といった人の手が届きにくい場所を巣にします。夜になって天井から足音が聞こえるという相談のほとんどはこの種です。
警戒心が強く、見慣れないものが置かれるとしばらく近寄らない性質があります。粘着シートや毒餌を置いた初日に何も起きなくても不思議ではなく、そこで効かないと判断して置き場所を変えてしまうと、いつまでも捕れません。
ドブネズミ|床下と水回りにいる大きいほう
三種のなかで最も大型で、体つきもがっしりしています。泳ぎが得意で、下水や排水まわりを通って床下や厨房に入ります。高い場所へ登るのは苦手なので、被害が一階の水回りや床下に集中している場合はこちらを疑います。糞もクマネズミに比べて大きく、まとまって落ちていることが多くなります。
気が荒く、追い詰められると人に向かってくることがあります。素手で追い払おうとするのは避けてください。
ハツカネズミ|小さくて、物置や納屋から入ってくる
三種のなかでは明らかに小型で、寿命も野生下でおおむね1年前後と短い種です。そのぶん繁殖のサイクルが速く、妊娠期間は20日前後しかありません。一匹捕れたから終わり、ということにはなりにくい相手です。
体が小さいぶん、6mm程度の隙間があれば入り込めます。他の二種なら通れない場所からでも侵入するため、物置や納屋、倉庫といった発生源の側を片付けるほうが、住居側で穴を探すより早く収まることがあります。
姿を見ていなくても、痕跡で絞り込める
ネズミは夜行性で、姿を見る機会はほとんどありません。実際の現場では、糞と足音とかじられた場所から種類を推定します。
| 手がかり | 絞り込める種類 |
|---|---|
| 音が天井・二階から聞こえる | クマネズミ |
| 音が床下・一階の床から聞こえる | ドブネズミ |
| 糞が比較的大きく、一か所にまとまっている | ドブネズミ |
| 糞が小さく、通り道に散らばっている | クマネズミ |
| 物置や倉庫のまわりで小さい個体を見た | ハツカネズミ |
糞は時間が経つと乾いて色が薄くなり、硬くなります。新しい糞は黒く湿っていて押すと潰れます。つまり糞を見れば、いま住みついているのか、過去にいた痕跡なのかまで分かります。
種類が分かると、やることが変わる
クマネズミなら、罠を置く場所は床ではなく梁や配管の上といった通り道になり、警戒心が強いので数日はそのままにして環境に慣れさせる必要があります。ドブネズミなら床面と水回りが中心で、屋外の排水経路まで見ないと入口が塞げません。ハツカネズミなら、通り道を塞ぐ前に発生源を断つほうが早い。
そしてどの種類でも、数を減らすことと、入れなくすることは別の作業です。侵入口が開いたままなら、しばらくして同じことが起きます。塞ぐべき隙間の大きさは1.5cmなのか6mmなのか、塞ぐ高さは天井なのか床下なのか。それを決めるのが、種類を確かめる目的です。
まとめ
住まいに入るネズミは三種で、行動圏の上下を見れば大半は区別がつきます。天井から音がするならクマネズミ、床下や水回りならドブネズミ、物置まわりの小さい個体ならハツカネズミです。姿を見ていなくても、音のする高さと糞の大きさ、落ち方から絞り込めます。そして種類が決まれば、塞ぐべき隙間が1.5cmなのか6mmなのかが決まります。
