ドブネズミは、家に出るネズミの中でいちばん大きな種類です。その名のとおり下水や溝を通り道にし、建物の低い場所や地面の穴に住みます。
かつては都市のネズミの主役でしたが、今ではビルの中ではクマネズミの方が多くなっています。この記事では、自治体・保健所・大学の資料で確認できた事実をもとに、ドブネズミの見分け方、家に出る理由、正しい対策を解説します。
ドブネズミの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名・学名 | ドブネズミ(Rattus norvegicus) |
| 大きさ | 体長22〜25cm、体重200〜400g(大阪府) |
| 見た目 | がっしりした体、厚く小さい耳、体より短い尾 |
| すみか | 下水・溝・ビルの低層階・地面に掘った穴 |
| 好む食べ物 | 肉や魚などの動物質 |
| 繁殖 | 1回に約8匹、年5〜6回(大阪府) |
| 寿命 | 約3年。ただし自然の中で1年以上生きるのは約5% |
| 法律 | 鳥獣保護管理法の対象外。許可なく捕獲できる |

見分け方|クマネズミ・ハツカネズミとの違い
家に出るネズミは主にドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種です。大阪府の資料をもとに比べると、次のようになります。
| 項目 | ドブネズミ | クマネズミ | ハツカネズミ |
|---|---|---|---|
| 体長 | 22〜25cm | 18〜22cm | 6〜10cm |
| 体重 | 200〜400g | 120〜200g | 10〜20g |
| 尾の長さ | 体の約0.8倍 | 体の約1.1倍 | 体の約0.8倍 |
| 耳 | 厚く小さい。倒しても目に届かない | 薄く大きい。倒すと目を覆う | 丸く大きい |
| 繁殖を始める時期 | 生後約3か月 | 生後約3か月 | 生後約35日 |
東京都多摩府中保健所の資料では、ドブネズミはおなかが灰色で尾が白っぽく、クマネズミはおなかが黄褐色で尾が黒いとされています。尾が体より短いか長いか、耳の大きさを見るのがわかりやすい見分け方です。
ふんの大きさでも見当がつきます。町田市保健所によると、ふんの長さはドブネズミが10〜20mm、クマネズミが6〜10mm、ハツカネズミが4〜7mmです。ドブネズミのふんがいちばん大きく、長さ1cmを超えるふんが見つかれば、ドブネズミの可能性が高いといえます。
生態|地面に穴を掘り、下水を通り道にする
多摩府中保健所によると、ドブネズミは肉や魚など動物質の食べ物を好み、下水やビルの低層階に住みます。高い所や天井裏を好むクマネズミとは、住む場所がはっきり分かれます。
東京都保健医療局の資料では、ドブネズミは地面に穴を掘って巣をつくる傾向があり、公園やビルの緑地、歩道わきの植え込みが巣になりやすいとされています。植え込みに出るネズミはドブネズミの可能性が高いということです。下水管や排水溝を通り道にしていて、行動範囲は半径約30mのクマネズミより広いとされています。
増え方
大阪府によると、ドブネズミの妊娠期間は約21日で、1回に約8匹を年5〜6回産みます。生後約3か月で子を産めるようになります。目黒区の資料では妊娠期間約25日、1回の出産数は平均約9匹です。
寿命は約3年ですが、大阪府は、自然の中で1年以上生きられるのは約5%だとしています。天敵や事故、食べ物不足で多くが早く死ぬ一方、生き残った個体が次々に子を産むことで数を保っています。
都市のネズミの主役は交代した
東京都保健医療局の資料によると、都内の捕獲調査でドブネズミが占めた割合は、昭和30年の58%から昭和42年には90%に増えました。下水道や下水溝が整備されたことが原因とされています。
しかし1970年代に入ると、大型のビルが増えたことと、殺そ剤で選んで駆除されたことにより、都心のビル街ではドブネズミが減りました。平成15年の調査では、一般住宅でドブネズミが確認されたのは15%で、クマネズミの88%を大きく下回っています。今では、種類がわかった相談の9割以上がクマネズミです。ドブネズミは下水溝や地下鉄の構内、地下街などに住んでいます。
同じ資料は、ドブネズミは食べ物の好みがクマネズミほど偏っておらず、殺そ剤も効きやすいとしています。多摩府中保健所も、ドブネズミは殺そ剤が効きやすく警戒心が低い一方、クマネズミは殺そ剤が効きにくく警戒心が非常に強いと説明しています。
原産は中国北部からモンゴル
ゲノムを解析したメンフィス大学などの研究(Genome Research 2019年)では、ドブネズミの祖先の分布域は北アジア、化石からは中国北部からモンゴルとされました。人の移動とともに東南アジアへ入り、海の交易路で世界に広がって、中央ヨーロッパには約800年前に着いたと推定されています。
家に入る場所と、いるサイン
500円玉ほどのすき間から入る
多摩府中保健所は、ネズミは1.2cm以上のすき間から入り、木材はかじって広げると説明しています。目黒区は、子ネズミは1.5cm、大人のネズミは2.5cm(500円玉ほど)のすき間を通れるとしています。
目黒区が侵入口を調べた結果では、屋外では床下の通風口(27.6%)、壁や基礎の穴(27.6%)、配管が通る部分(17.1%)、戸袋(16.1%)が多く、室内では壁や床の穴(32.7%)と流し台のまわり(27.2%)が多くなっています。

ふん・こすりあと・かじりあと
多摩府中保健所は、ネズミがいるサインとして、ふん、体の脂と汚れでできる黒光りした「こすりあと」、かじったあとを挙げています。近くにすき間があれば出入口の可能性が高いとしています。町田市は、夜中や明け方に天井や壁の中でカタカタ音がすることもサインに挙げています。
被害|感染症と建物への影響
大阪府は、ネズミが媒介する病気としてワイル病(レプトスピラ症)やサルモネラ食中毒を挙げ、ダニやノミなどを運ぶことも指摘しています。目黒区は、ネズミに付くイエダニによって人が刺される被害を挙げています。
京都府感染症情報センターによると、レプトスピラ症の原因菌はドブネズミなどの腎臓にすみつき、尿と一緒に出てきます。感染から発症までは5〜14日で、重い型はワイル病と呼ばれ、黄疸や出血、腎臓の障害を起こします。国内での感染例は毎年15〜42例です。
一方で目黒区は、現在の日本ではネズミが媒介する危険な感染症の流行はないとしています。必要以上に怖がる必要はありませんが、ふんや尿に素手で触れない、掃除のあとは手を洗うといった基本を守ることが大切です。
建物への被害としては、多摩府中保健所が電気の配線をかじることを挙げています。
法律|ネズミは許可なく捕獲できる
野生の鳥獣は鳥獣保護管理法で原則として捕獲が禁止されていますが、北九州市・鳥取県によると、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミは適用の対象外で、いつでも誰でも捕獲できます。京都市も、ネズミの捕獲や殺傷に許可は不要だとしています。ただし、ネズミ用のわなにイタチなど別の動物がかかった場合は放さなければなりません(京都市)。
対策|最も効果があるのは侵入口をふさぐこと
目黒区は、金網やステンレスたわし、パテを使って侵入口をふさぐ「防鼠(ぼうそ)工事」が最も効果的だとしています。また、殺そ剤は屋根裏などで死んで腐るおそれがあるため冬以外はすすめていないこと、忌避剤だけで駆除できた例はないことも説明しています。
捕獲には、かごわなや粘着シートを使います。町田市は、かごわなは4〜5日は場所を変えずに置くこと、屋外ではドブネズミがかかりやすいことを紹介しています。
ドブネズミは地面や下水から入ってくるため、私たちは床下の通風口や基礎の穴、配管まわりといった低い場所の点検から始めることをおすすめしています。自分での駆除の手順はネズミ駆除を自分でする方法、超音波の効果についてはネズミの超音波対策は効く?で詳しく解説しています。
よくある質問
- ネズミを捕まえるのに許可は要りますか?
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ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミは鳥獣保護管理法の対象外のため、許可なく捕獲できます(北九州市・京都市)。
- 何cmのすき間から入りますか?
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大人は2.5cm(500円玉ほど)、子ネズミは1.5cmのすき間を通れます(目黒区)。
- クマネズミとの違いは?
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ドブネズミは体が大きく、尾が体より短く、耳が小さく厚いのが特徴です。クマネズミは尾が体より長く、耳が大きく薄いです(大阪府)。
- 忌避剤だけで追い出せますか?
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目黒区は、忌避剤だけで駆除できた例はないとしています。侵入口をふさぐ防鼠工事が最も効果的です。
- 病気がうつりますか?
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レプトスピラ症やサルモネラ食中毒の原因になることがあります(大阪府)。ただし目黒区によると、現在の日本ではネズミが媒介する危険な感染症の流行はありません。
まとめ
ドブネズミは体長22〜25cmの大型のネズミで、尾が体より短く、耳が小さいのが目印です。地面に穴を掘り、下水を通り道にして、建物の低い場所から入ってきます。法律上は許可なく捕獲できますが、最も効果があるのは床下や配管まわりの侵入口をふさぐことです。クマネズミ、ハツカネズミの生態もあわせてご覧ください。
