夏の夜、玄関の灯りにつやつやした緑色のカメムシが集まってくる。そのひとつがツヤアオカメムシです。ミカンやカキ、ウメなどの果樹を加害する「果樹カメムシ」の一種で、兵庫県では2024年に過去にない数が確認されました。
この記事では、県の病害虫防除所や農研機構の資料で確認できた事実をもとに、ツヤアオカメムシの見分け方、どこから来るのか、家や果樹での対策を解説します。
ツヤアオカメムシの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名・学名 | ツヤアオカメムシ(Glaucias subpunctatus) |
| 大きさ | 約11〜17mm(島根県)。14〜17mm(熊本県)、約15mm(名古屋市)とする資料も |
| 色 | 全体が光沢の強い緑色。暗い色の小さな点刻がある |
| 分布 | 関東以南。近年は関東北部や福島県の沿岸部でも普通に見られる |
| 発生 | 年1〜2回(熊本県)。年1回とする資料も(島根県) |
| 越冬 | 成虫が常緑広葉樹の茂みの中で冬を越す |
| 主な被害 | ミカン・カキ・ナシ・ウメなどの果実 |

見分け方|全身がつやのある緑色
島根県は全体が光沢のある緑色、熊本県は光沢の強い緑色で暗い色の小さな点刻があると説明しています。名前のとおり、つやがあることが大きな特徴です。
似た緑色のカメムシに、チャバネアオカメムシとミナミアオカメムシがいます。名古屋市によると、チャバネアオカメムシは前翅が紫がかった茶色です。ミナミアオカメムシは別の種(Nezara viridula)で、主にイネなどを加害します。全身がつやのある緑一色ならツヤアオカメムシと考えてよいでしょう。
一年の暮らし|山のスギ・ヒノキで増える
熊本県の資料によると、ツヤアオカメムシは主に山林のスギ・ヒノキの実(球果)で繁殖し、果樹園の中では原則として繁殖しません。春から夏はサクラやクワなどで増えながら移動し、7〜8月はスギ・ヒノキでの産卵・繁殖が中心になります。そして、スギ・ヒノキの実の状態が悪くなると、エサを求めて果樹園に飛んでくることが増えます。
成虫は長生きで長い期間にわたって卵を産むため、世代の区切りははっきりしません(熊本県・外山2014)。冬は成虫が常緑広葉樹の茂みの中で過ごします(大阪府・熊本県・島根県)。
3種の果樹カメムシで最も寒さに弱い
農研機構の外山晶敏氏によると、ツヤアオカメムシは果樹カメムシ3種(チャバネアオカメムシ・クサギカメムシ・ツヤアオカメムシ)の中で最も寒さに弱く、定期的に水を飲む必要があります。そのため西南日本の暖かい地域の沿岸部で特に目立ちます。
一方で分布は北に広がっていて、外山氏は関東北部や福島県の沿岸部でも普通に見られるようになったと報告しています。宮城県の資料では、宮城では冬を越せず、関東より西から毎年飛んでくると考えられています。外山氏は、3種の中で最も知見が少なく、野外での生態にはまだわからないことが多い種だとしています。
果樹への被害
名古屋市は、ツヤアオカメムシをミカン・カキ・ナシなどの果樹の主な害虫の一つとしています。島根県によると、カキでは7〜10月に果実の汁を吸い、7月から9月上旬に吸われた果実は落ちることが多くなります。カキの上では幼虫は育ちません。
和歌山県農作物病害虫防除所は、早く収穫するウメ(小梅など)が強く被害を受け、森林に隣接する園地には早い時期から飛んでくると注意を呼びかけています。2020年5月上旬には、和歌山県みなべ町の予察灯で1,462匹が捕まり、平年(357.4匹)の4倍を超えました。大阪府も、近年は発生が増える傾向にあるとしています。
兵庫県では2024年に記録的な数
兵庫県病害虫防除所の2024年の注意報では、南あわじ市のトラップに4月だけで79匹がかかりました。過去3年の最高は1匹です。7月の予察灯の数も平年を大きく上回りました。
| 地点 | 2024年7月の誘殺数 | 平年 |
|---|---|---|
| 朝来市 | 635匹 | 29.5匹 |
| 加西市 | 75匹 | 0.4匹 |
同防除所は、ツヤアオカメムシなどの果樹カメムシは夜を中心に活動するため、薬剤は夕方にまくと効果が高いこと、山林に近い果樹園では飛来が多いことを注意点に挙げています。
姫路市に近い加西市でも急増
表のとおり、姫路市の北東に隣接する加西市では、2024年7月の誘殺数が平年の0.4匹に対して75匹でした。ツヤアオカメムシは本来めったに見ない地点でも、この年は大きく数を増やしています。果樹カメムシが多い年は、家の灯りに集まる数や、洗濯物に付く数も増えやすくなります。山林に近い住宅では、夏から秋にかけて網戸や窓のすき間を点検しておくと安心です。

家への影響
名古屋市は、家の中に迷い込んだ個体や洗濯物に付いた個体が、悪臭を伴う不快害虫になることがあるとしています。島根県も、どのカメムシも特有のにおいを出すと説明しています。
予察灯に大量に集まることからもわかるように、ツヤアオカメムシは夜の灯りに集まります。夏から秋の夜、玄関灯や窓の明かりのまわりで見かけるのはこのためです。
家に入れない対策
黄色い電球は効かない
大阪府と香川県病害虫防除所の資料は、黄色灯でカメムシを寄せ付けにくくする効果はチャバネアオカメムシに対するもので、ツヤアオカメムシやクサギカメムシには効果がないとしています。夜は照明を最小限にし、紫外線をカットした防虫ランプを使う方法を堺市が勧めています。
すき間をふさぎ、洗濯物は室内へ
堺市は、カメムシは2〜3mmのすき間から入るため、網戸や窓のすき間を隙間テープでふさぐこと、飛来の多い時期は洗濯物を室内に干すことを勧めています。家の中で見つけたときは、つぶさずにガムテープや紙で捕まえてください。
他のカメムシとの見分け方
| 種類 | 見分けるポイント |
|---|---|
| ツヤアオカメムシ | 全体がつやのある緑色 |
| チャバネアオカメムシ | 緑色で前翅が紫がかった茶色 |
| ミナミアオカメムシ | 別の種。主にイネなどを加害 |
| クサギカメムシ | 暗褐色に不規則なまだら模様 |
| マルカメムシ | 約5mmで丸い形 |
よくある質問
- どこから来るのですか?
-
主に山林のスギ・ヒノキの実で増え、エサの状態が悪くなると果樹園や人里に飛んできます(熊本県)。
- 冬はどこにいますか?
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成虫が常緑広葉樹の茂みの中で冬を越します(大阪府・島根県)。
- ミナミアオカメムシと同じですか?
-
別の種です。ミナミアオカメムシは学名 Nezara viridula で、主にイネなどを加害します。
- 黄色い電球で防げますか?
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ツヤアオカメムシには効果がないとされています(大阪府・香川県)。紫外線をカットした防虫ランプを使い、夜の照明を減らしてください。
まとめ
ツヤアオカメムシは、全身がつやのある緑色の果樹カメムシです。山林のスギ・ヒノキで増え、エサが減ると果樹園や人里に飛んできて、夜の灯りに集まります。寒さに弱い暖地の種ですが分布は北へ広がっていて、兵庫県では2024年に記録的な数が確認されました。家では照明を減らし、すき間をふさぐことが基本です。大量発生したときの対処はカメムシの大量発生対策、カメムシ全般はカメムシの生態もあわせてご覧ください。
出典
- 熊本県 果樹カメムシ類資料(PDF)
- 島根県病害虫防除所「カキのカメムシ類」
- 大阪府「果樹カメムシ類 生態と防除対策」(2021、PDF)
- 外山晶敏「果樹カメムシ類の発生生態と防除対策」植物防疫68(7) 2014(PDF)
- 宮城県「果樹カメムシ類」(PDF)
- 和歌山県農作物病害虫防除所「果樹カメムシ類(ツヤアオカメムシ)の発生に注意して下さい」(2020、PDF)
- 兵庫県病害虫防除所 令和6年度 注意報第1号(PDF)
- 兵庫県病害虫防除所 令和6年度 注意報第3号(PDF)
- 香川県病害虫防除所「果樹カメムシ類の防除の徹底について」(2024、PDF)
- 名古屋市衛生研究所「カメムシ類(2)」
- 堺市「カメムシ」
