アライグマは北アメリカ原産の外来の動物です。もともと日本にはいませんでしたが、ペットとして輸入されたものが野生化し、今では沖縄県を除くすべての都道府県で見つかっています。
屋根裏にすみついて子育てをしたり、畑の作物を荒らしたりするほか、法律で「特定外来生物」に指定されていて、扱いにも決まりがあります。この記事では、環境省・兵庫県・姫路市などの資料で確認できた事実をもとに、アライグマの見分け方、家に入る理由、法律と対策を解説します。
アライグマの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名・学名 | アライグマ(Procyon lotor) |
| 原産 | 北アメリカ |
| 大きさ | 頭胴長42〜60cm、尾長20〜41cm、体重4〜10kg(環境省) |
| 見た目 | 目のまわりの黒いマスク模様、尾に5〜7本の黒い縞 |
| 出産 | 春に3〜6頭(環境省) |
| 冬 | 冬眠しない。冬は活動が鈍る |
| 法律 | 外来生物法の特定外来生物(2005年指定) |
| 分布 | 2024年の調査で沖縄県を除く全都道府県 |

見分け方|タヌキ・ハクビシンとの違い
東京都の「見分け方」資料では、アライグマは尾に5〜7本の黒い縞があり、足跡は5本の指で爪が長く、爪のあとがはっきり残ります。環境省の手引きは、足跡が人の子どもの手形のようだと説明しています。
| 比べる点 | アライグマ | ハクビシン | タヌキ |
|---|---|---|---|
| 尾 | 黒い縞が5〜7本 | 長い | 太くふさふさ |
| 足跡 | 5本指、爪あとがはっきり | 5本指、爪あとは不明瞭 | 4本指で丸い(ネコに似る) |
尾と足跡は東京都の資料によります。タヌキも目のまわりが黒いため間違えられやすいのですが、環境省によるとアライグマはタヌキより一回り大きく、尾が長いのが違いです。
日本に広がった経緯
環境省「アライグマ防除の手引き」(2025年3月改訂)によると、国内で初めて野生化が確認されたのは1962年で、愛知県の動物園から逃げ出したとみられる個体でした。その後、1970年代後半にテレビアニメで人気が出てペットとして大量に輸入され、飼いきれなくなって捨てられたり逃げ出したりした個体が各地に定着しました。
全国の捕獲数は1991年度にはわずか9頭でしたが、2020年には9万6千頭を超えています。2024年の市町村へのアンケートでは、沖縄県を除くすべての都道府県で生息が確認されました。
兵庫県での状況
兵庫県では1990年代に神戸市を中心に初めて確認されました。県の資料によると、捕獲数と農業被害額は次のように推移しています。
| 年度 | 捕獲数 | 農業被害額 |
|---|---|---|
| 平成30年度 | 6,418頭 | 5,491万円 |
| 令和2年度 | 7,652頭 | 4,323万円 |
| 令和4年度 | 8,563頭 | 5,236万円 |
農業被害額は令和5年度に5,713万円、令和6年度には7,837万円に増えています(兵庫県)。
生態|器用な手と高い繁殖力
春に3〜6頭を産む
環境省の手引きによると、アライグマは春に3〜6頭の子を産みます。兵庫県の防除指針では、妊娠期間は約2か月で、春ごろに平均3〜4頭を産み、出産に失敗すると再び出産することがあるとされています。千葉県は、1歳から繁殖でき、年に1回出産すると説明しています。東京都は、冬から春先に交尾して春から初夏に出産するとし、夏以降の繁殖も確認されているとしています。
冬眠はしないが、冬は動きが鈍る
環境省の資料では、アライグマは冬眠せず、冬は巣穴で体の働きを抑えて過ごすとされています。兵庫県の防除指針も、冬は活動が大きく鈍くなるとしています。
手先が器用で、柱を登る
環境省の手引きによると、アライグマは手先が器用で、木登りや綱渡りが得意です。社寺の柱に爪をかけて登り、すき間から屋根裏に入り込んで、文化財としての価値を損なうことがあります。京都市では、社寺に残された爪あとの調査が2005年から続けられています。
家に入る理由と、いるサイン
屋根裏で子育てをする
兵庫県の防除指針は、アライグマが民家の天井裏で子育てをすることがあり、春から初夏にふんや尿の被害が出ると説明しています。
埼玉県によると、アライグマは10cm四方のすき間でも入り込み、はしごや屋根にかかる庭木を伝って登ります。

いるサイン
東京都の侵入チェックシートでは、次のようなサインを挙げています。建物に5本指の足跡や、柱を登った5本の爪あとがある。天井にしみや水滴があり、大きな足音がする。天井裏に犬のふんのようなものがたくさんある。こうしたサインがあれば、アライグマやハクビシンがすみついている可能性があります。
被害|農作物・生態系・感染症
環境省の手引きによると、アライグマによる農業被害は2022年度に全国で4億5千万円を超えました。トウモロコシ・スイカ・メロン・ブドウなど甘い作物が狙われます。ニホンイシガメやカエル、フクロウのひななど在来の生き物を食べることも問題になっています。
感染症については、東京都が狂犬病、アライグマ回虫、レプトスピラ症、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などを、アライグマ・ハクビシンに関わる主な感染症として挙げています。
アライグマ回虫は海外で重い症例がある寄生虫ですが、厚生労働省のガイドラインによると、国内では一部の動物園の飼育個体で見つかったものの、野生化した個体からはこれまで見つかっていません。厚生労働科学研究(平成15年度)でも、野生化したアライグマ573頭のふんから検出されませんでした。
姫路で捕まったアライグマからノミ
兵庫県立人と自然の博物館の紀要(2025年)によると、2023年12月から2024年4月に神戸市北区と姫路市(兼田・的形)で捕獲されたアライグマ21頭のうち、8頭からノミが見つかりました。兵庫県のアライグマからノミが記録されたのは初めてで、人を刺すネコノミも含まれていました。屋根裏にすみつかれた家では、ノミやダニにも注意が必要です。
法律|特定外来生物としての決まり
アライグマは2005年に外来生物法の特定外来生物に指定されました。環境省によると、飼うこと、運ぶこと、輸入すること、野外に放すこと、売ることは原則として禁止されています。野外で捕まえた個体を生きたまま持ち帰ることも「運搬」にあたり、禁止です。
罰則も重く、個人が許可なく野外に放すと3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金になります(環境省)。
姫路市での捕獲
姫路市は、外来生物法に基づく「姫路市アライグマ等防除実施計画」で捕獲を進めています。市の案内では、囲いのある自宅の敷地内や自分で耕作する農地では、狩猟免許がなくても所有者などの了承を得て箱わなを設置できるとしています(アライグマ・ヌートリアに限る)。市の檻は農区や自治会に貸し出していて、個人には貸していません。
家屋に入り込んだ動物の追い払いは所有者の対応とされていて、市は相談窓口として兵庫県ペストコントロール協会を案内しています。わなを設置する前に、必ず市の最新の案内を確認してください。
対策|入らせない・寄せつけない
兵庫県の防除指針は、屋根裏に入られた場合は燻煙剤で追い出して侵入口をふさぐこと、換気口などは金網でふさぐこと、農地では電気柵を基本にすることを挙げています。
ただし東京都は、燻煙剤で追い出しても別の家に移るだけで、数を減らす根本的な対策にはならないとしています。追い出したあとに侵入口を確実にふさぐことが欠かせません。屋根にかかる庭木の枝を切る、生ごみやペットのエサを屋外に置かない、といった寄せつけない工夫も大切です。
よくある質問
- 自分で捕まえてもいいですか?
-
アライグマは特定外来生物で、捕獲は自治体の防除実施計画などの枠内で行います。姫路市では自宅の敷地内などに箱わなを設置できる案内がありますが、事前に市の最新情報を確認してください。生きたまま運ぶことは禁止されています(環境省)。
- 飼うことはできますか?
-
特定外来生物のため、原則として飼うことはできません(環境省)。
- タヌキとの見分け方は?
-
アライグマは尾に5〜7本の黒い縞があり、足跡は5本指です。タヌキの足跡は4本指です(東京都)。
- アライグマ回虫は日本にもいますか?
-
国内では動物園の飼育個体で見つかったことがありますが、野生化した個体からは見つかっていません(厚生労働省)。
- 何cmのすき間から入りますか?
-
10cm四方のすき間でも入り込むとされています(埼玉県)。
まとめ
アライグマは尾の黒い縞と5本指の足跡が目印の外来の動物で、今では沖縄県を除く全国に広がっています。屋根裏で子育てをし、農作物や在来の生き物にも被害を与えます。特定外来生物のため扱いには決まりがあり、姫路市では防除実施計画に沿って捕獲が進められています。追い出したあとに侵入口をふさぐことが対策の基本です。似た動物のハクビシンの生態もあわせてご覧ください。
出典
- 環境省「アライグマ防除の手引き」(令和7年3月改訂、PDF)
- 環境省「何が禁止されているの?」
- 環境省「罰則について」
- 環境省「防除に関するQ&A」
- 厚生労働省「アライグマ回虫の検査等のガイドライン」(PDF)
- 厚生労働科学研究 平成15年度「動物由来寄生虫症の流行地拡大防止対策に関する研究」
- 東京都環境局「アライグマ・ハクビシンについて」
- 東京都環境局「被害を防ぐために」
- 東京都「アライグマ・ハクビシン・タヌキ・アナグマの見分け方」
- 東京都「アライグマ・ハクビシン侵入チェックシート」
- 東京都「アライグマ・ハクビシンに関する主な人獣共通感染症」
- 兵庫県「兵庫県アライグマ防除指針」(令和3年2月)
- 兵庫県議会 農政環境常任委員会資料(令和5年11月、PDF)
- 兵庫県「野生鳥獣の農林業被害額状況について(令和6年度実績)」
- 姫路市「鳥獣対策事業」
- 千葉県「アライグマ」
- 埼玉県「アライグマについて」(PDF)
- 明尾ほか(2025)「兵庫県南部のアライグマから採集されたノミ類」人と自然35(PDF)
- 川道美枝子ほか「京都市内でのアライグマの出没動向」京都歴史災害研究17(2016、PDF)
