ヤマトゴキブリは、日本に昔からいる在来のゴキブリです。クロゴキブリとよく似た黒っぽい色をしていますが、寒さに強く、屋外で冬を越せるのが大きな違いです。
この記事では、自治体の資料や学術論文で確認できた事実をもとに、ヤマトゴキブリの見分け方、冬を越すしくみ、家に出る理由と対策を解説します。
ヤマトゴキブリの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名・学名 | ヤマトゴキブリ(Periplaneta japonica) |
| 大きさ | 約2〜3.5cm(資料により20〜35mm、約30mmなど) |
| 色 | 黒褐色。クロゴキブリより光沢が少ない |
| オスとメス | オスは翅が腹部を覆う。メスの翅は短く、腹部の半分ほど |
| 本来の分布 | 東北〜近畿。中国地方が南限とされてきた |
| すみか | 屋外の朽木・落ち葉の層・薪の下・樹洞、住宅や農家 |
| 冬の過ごし方 | 幼虫が休眠して屋外で越冬する |

見分け方|クロゴキブリとの違い
名古屋市によると、ヤマトゴキブリは黒褐色で、クロゴキブリに比べて光沢が少ないのが特徴です。川崎市は、胸の背中(前胸背板)がやや凸凹していると説明しています。
いちばんわかりやすいのはメスの翅です。メスの翅は短く、腹部の半分ほどしか覆っていません(名古屋市・川崎市)。一方、オスはやや細長い体つきで、翅が腹部を完全に覆います。そのためオスはクロゴキブリと見間違えやすく、つやの少なさと胸の凸凹で見分けることになります。
| 比べる点 | ヤマトゴキブリ | クロゴキブリ |
|---|---|---|
| 大きさ | 約2〜3.5cm | 約3〜4cm |
| つや | 少ない | 強い |
| メスの翅 | 短く腹部の半分ほど | 腹部を覆う |
| 冬 | 屋外で幼虫が越冬できる | 主に屋内や暖かい場所で過ごす |
大きさは川崎市・名古屋市の資料、クロゴキブリの大きさは名古屋市の資料によります。
生態|寒さに強い在来のゴキブリ
幼虫が休眠して冬を越す
札幌市での初記録を報告した論文(青山ら、衛生動物 2013年)は、これまでの研究をまとめて、ヤマトゴキブリは孵化した直後を除くすべての齢の幼虫が、日の長さと温度に応じて休眠すると説明しています。新潟県柏崎市で1月に採集された越冬個体は、すべて幼虫でした。
同じ論文が紹介する研究では、5℃の環境で幼虫は120日、成虫は90日生き延びました。さらに一部の齢の幼虫は、−6〜−7℃で体が凍っても生き残ったと報告されています。屋外で冬を越せるのは、この寒さへの強さによるものです。
20℃でも卵を産む
大森南三郎氏の総説(1982年)によると、チャバネゴキブリやワモンゴキブリは20℃では産卵しませんが、ヤマトゴキブリは20℃でも普通に産卵します。暖房のない環境でも増えられる点が、南方系のゴキブリとの大きな違いです。
秋田市の資料では、ヤマトゴキブリの活動は20℃を下回ると鈍くなり、好む温度は25〜31℃とされています。冬は屋外で休眠し、暖かくなる春から秋に活動する、というのが基本の一年です。
卵から成虫まで
川崎市の資料では、1つの卵鞘(らんしょう)に入る卵は14〜19個、卵の期間は27〜42日、幼虫の期間は98〜140日、成虫の寿命は約5か月とされています。大森氏の総説では卵数6〜16個、卵の期間約30日です。
ただしこれは飼育下の数字です。野外では幼虫の休眠をはさむため、卵から成虫になるまで2年かかる生活のしかた(2年1世代)だとする研究も、青山らの論文で紹介されています。
| 段階 | 目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 1つの卵鞘の卵数 | 14〜19個(6〜16個とする資料も) | 川崎市・大森1982 |
| 卵の期間 | 27〜42日 | 川崎市 |
| 幼虫の期間(飼育下) | 98〜140日 | 川崎市 |
| 成虫の寿命 | 約5か月 | 川崎市 |
| 野外での生活環 | 幼虫の休眠をはさみ2年1世代とする研究あり | 青山ら2013 |
どこにいて、なぜ家に出るのか
名古屋市は、ヤマトゴキブリは完全な屋内性ではなく、屋外の朽木や落ち葉の層にもすんでいて、休眠して日本の冬を越すことができると説明しています。また、クロゴキブリほど重要な害虫ではないとしています。川崎市は、住宅や農家のほか、屋外では薪の下や樹洞にいるとしています。
つまり、家のまわりに朽木や落ち葉、積んだ薪があると、そこが住みかになり、近くの家に入り込むことがあります。

分布は広がっている
青山らの論文によると、ヤマトゴキブリの本来の分布は東北から近畿で、中国地方が南限とされてきました。しかし近年は北海道・大分・宮崎・鹿児島・沖縄でも見つかっていて、人の移動や物の運搬によって広がったと推測されています。
札幌市内の記録は、北海道神宮や円山公園、住宅地に集中していて、石垣・古木・老木のある環境でした。住宅では郵便受けが侵入口だった可能性があり、屋内で繁殖した可能性も示されています。
海外にも渡っている
2012年には、アメリカ・ニューヨークの公園「ハイライン」で駆除業者が見つけ、ラトガース大学の研究者がDNAを調べて2013年にヤマトゴキブリと確認しました。アメリカでの確認は初めてです。観賞用の植物の土に混じって運ばれた可能性が疑われていますが、確認はされていません。定着するかどうかはまだわからないとされています。
このとき現地では「雪の中でも冬を越せるゴキブリ」として報じられました。ラトガース大学の発表は、日本の研究者が約20年前に、幼虫が雪の中でも生き残れることを測っていたと紹介しています。
家の中で見つけたときの対処
まず種類と大きさを確かめる
黒っぽく大きなゴキブリを見つけたら、つやの強さと翅の長さを見てください。つやが少なく、翅が腹部の半分ほどしかなければヤマトゴキブリのメスです。翅の短い個体はクロゴキブリの幼虫と迷うことがありますが、幼虫には翅そのものがありません。
ときどき1匹出る程度なら、外からの侵入を疑う
ヤマトゴキブリは屋外にもすむため、ときどき1匹見かける程度なら、外から入ってきた個体の可能性が高いです。札幌市の例では郵便受けが侵入口と推察されています(青山ら2013)。玄関まわりや郵便受け、床下の通気口、配管が壁を貫通する部分の隙間を確認し、ふさいでください。
何度も出る、小さい幼虫も出るなら、屋内で増えていないか確認する
同じ場所で何度も見かける、小さな幼虫も一緒に出る、という場合は、屋内で繁殖している可能性があります。粘着トラップを台所や洗面所、玄関など数か所に置いて、どこで多く捕まるかを見ると、潜んでいる場所の見当がつきます。
千葉市はゴキブリの防除方法として、通り道への薬剤の吹き付け(残留処理)、くん煙、毒餌、粘着トラップを挙げ、長い目で見て最も効果的なのは環境の整備だとしています。ヤマトゴキブリの場合は、屋内の掃除に加えて、家のまわりの朽木や落ち葉、薪の片付けが環境の整備にあたります。
家に入れないための対策
ヤマトゴキブリは屋外の朽木や落ち葉、薪の下にすむため、私たちは家のまわりにこうした場所を作らないことをおすすめしています。建物の北側など日当たりの悪い場所に積んだ薪や植木鉢、落ち葉のたまりは、早めに片付けると効果があります。
屋内では、出入りする隙間をふさぐことと、通り道への毒餌の設置が基本です。東京都の施設向けマニュアルも、清掃・整理整頓で発生源をなくすことと毒餌の設置を防除の基本にしています。
他のゴキブリとの見分け方
| 種類 | 大きさ | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| ヤマトゴキブリ | 約2〜3.5cm | 黒褐色でつやが少ない、メスの翅が短い |
| クロゴキブリ | 約3〜4cm | 黒褐色でつやが強い |
| チャバネゴキブリ | 約1〜1.2cm | 黄褐色で胸に黒い縦線2本 |
| ワモンゴキブリ | 約3〜4cm | 赤褐色で胸に黄白色の輪の模様 |
よくある質問
- 冬でも外にいるのですか?
-
はい。青山らの論文によると、ヤマトゴキブリは幼虫が休眠して屋外で冬を越します。新潟県で1月に見つかった越冬個体はすべて幼虫でした。
- クロゴキブリとどう見分けますか?
-
つやが少ないこと、メスの翅が短く腹部の半分ほどしかないことが目印です(名古屋市・川崎市)。オスは翅が長いため、つやと胸の凸凹で見分けます。
- 北海道にもいますか?
-
近年、札幌市で記録されています。青山らの論文は、人の移動や物の運搬によって分布が広がったと推測しています。
- 家の中で増えますか?
-
完全な屋内性ではなく、名古屋市はクロゴキブリほど重要な害虫ではないとしています。ただし札幌市の例では屋内で繁殖した可能性も示されているため、屋内で何度も見かける場合は早めに対策してください。
まとめ
ヤマトゴキブリは、つやの少ない黒褐色と、メスの短い翅が目印の在来のゴキブリです。幼虫が休眠して屋外で冬を越し、20℃でも産卵できるほど寒さに強いのが特徴です。家のまわりの朽木や落ち葉、薪を片付け、隙間をふさいで毒餌を置くことが対策の基本です。ゴキブリ全体の対策はゴキブリ駆除の方法まとめ、市販品の選び方は市販で最強のゴキブリ駆除剤は?もあわせてご覧ください。
出典
- 名古屋市「ゴキブリ類」
- 川崎市「ゴキブリ」(PDF)
- 新潟市保健所 不快害虫資料(PDF)
- 青山修三ほか「札幌市におけるヤマトゴキブリの初記録」衛生動物64(4) 2013(PDF)
- 大森南三郎「ゴキブリ類の分類,生理,生態と駆除」(1982、PDF)
- 東京都健康安全研究センター「IPM(総合的有害生物管理)をご存知ですか?」(PDF)
- 千葉市「ゴキブリの生態と防除方法」
- Entomology Today “Cold-tolerant Cockroach from Asia has been Found in New York”
- ScienceDaily(Rutgers University発表)2013
- 秋田市「ゴキブリ」
- Rutgers SEBS/NJAES News(2013年12月)
