ある日を境に、外壁や窓が一面カメムシだらけになる。去年は気にならなかったのに今年はひどい。こうした秋の大量発生には、はっきりした仕組みがあります。そして重要なのは、秋の大量発生は二種類あって、原因も対策もまったく違うということです。ここを分けずに対策すると、効かないほうの手を打つことになります。
秋の大量発生は二種類ある
| 光に寄せられて集まるもの | 越冬のため屋内に入るもの | |
|---|---|---|
| 時期 | 9月末〜10月頃の夕方から夜間 | 10月以降 |
| 主な種類 | ツヤアオカメムシ、チャバネアオカメムシ | クサギカメムシ、スコットカメムシなど |
| 色 | 黄緑色 | 黒〜茶色 |
| どこに集まるか | 白い光に寄り、外壁や窓に張りつく | 山間の地域で家の中まで入る |
| 効く対策 | 光を減らす | 隙間を塞ぐ |
この二つは別の現象です。外壁に緑色のカメムシが大量に張りついているなら、それは光に寄ってきたもので、隙間を塞いでも減りません。逆に、室内に茶色いカメムシが繰り返し出てくるなら、それは越冬のために入り込んだもので、照明を消しても手遅れです。まず自分の家で起きているのがどちらかを見分けてください。見分けは色でつきます。緑なら光、茶色や黒なら越冬です。
なぜ「当たり年」があるのか
カメムシの発生量は年によって大きく違います。これは気のせいではなく、実際に当たり年とそうでない年があります。
光に寄ってくる側、つまりツヤアオカメムシやチャバネアオカメムシは、夏に山でスギやヒノキの実を吸って繁殖します。スギ・ヒノキの実の量は年によって差があり、実が少なければ発生量も限られます。逆に実が豊作の年は、山で育つ個体数が跳ね上がります。伊丹市昆虫館は、2023年のツヤアオカメムシの大発生について、夏に山で繁殖する際の餌となるスギやヒノキの実が多かったのではないかと説明しています。
ここから、よく言われる「春に花粉が多い年はカメムシが多い」という話が出てきます。花粉が多いということは、スギ・ヒノキが多く実をつけるということで、それがそのまま夏の餌の量になります。この関係は確認されており、自治体の農政課でも情報として活用されています。
もうひとつの要因が前年の冬です。暖冬で越冬した成虫が多く生き残った年は、翌シーズンの出発点の個体数が多くなります。ただし、そこから秋までのあいだに風雨や台風の影響を受けるため、最終的にどれだけ残るかは実際にその時期になってみないと分かりません。予測が難しいのはこのためです。
つまり当たり年の条件は、前年が暖冬で越冬成虫が多く、スギ・ヒノキの実が豊作で、夏から秋にかけて大きな風雨がないこと。この三つが重なった年に、外壁が埋まるような事態になります。
光に集まるカメムシへの対策は、光を減らすこと
9月中下旬以降、山で育った個体が、いろいろな方向へ分散していきます。このとき手がかりにしているのが光です。街灯や建物の照明に集中して集まります。
重要なのは、光の種類によって集まり方が違うことです。誘引する力が最も強いのが水銀灯、次いで蛍光灯、そしてLEDの順になります。つまり屋外の照明が古い水銀灯や蛍光灯のままなら、それ自体が集客装置として働いています。伊丹市昆虫館も、消してよい照明を落として光量を下げること、昆虫を誘引しにくいLED照明へ交換することを対策として挙げています。
| やること | 効き方 |
|---|---|
| 玄関灯・外壁灯をLEDに替える | 誘引そのものを減らす。恒久的 |
| この時期だけ屋外照明を消す・減らす | すぐできる。効果が大きい |
| カーテンを閉めて室内の光漏れを止める | 窓に集まるのを減らす |
| ベランダの照明を点けっぱなしにしない | 洗濯物への付着も同時に減る |
屋外の照明を全部消すわけにはいかない場合でも、玄関のダウンライトだけにする、センサー式に替えて点灯時間を短くするといった減らし方があります。ここは殺虫剤を撒くより効きます。飛んできて壁に着地する個体そのものを減らせるからです。
越冬で入ってくるカメムシへの対策は、時期と隙間
10月以降に問題になるのがこちらです。気温が下がると、屋外にいた個体が暖かい場所を求めて移動します。引き金になるのは9月下旬から10月の冷え込みで、晴れた日を選んで一斉に動く習性があるため、一匹ずつではなくまとまって押し寄せる形になります。
集まりやすいのは日当たりの良い南向きの壁や窓です。カメムシは飛んできて壁に着地し、そこから歩いて隙間を探します。つまり経路は、着地する面と、そこから続く隙間の二段階です。片方だけでは入れません。
| 見る場所 | 何を確認するか |
|---|---|
| 網戸とサッシ | 網戸の破れ、レールとの間の隙間、戸車の劣化で生じる下端の空き |
| 換気口・通気口 | 防虫網の有無と破れ |
| 換気扇のフード | 外側のシャッターが閉まるか |
| エアコンの配管穴 | 屋外側のパテの劣化 |
| 戸袋・雨戸 | 戸袋の中は死角。掃除のついでに確認する |
| 玄関ドア | 下端のすき間、ドアクローザーの当たり |
| 南向きの外壁 | ひび、シーリングの切れ |
この作業は、10月に入ってからでは遅いことがあります。冷え込んで移動が始まってからでは、すでに壁の中や天井裏へ入られている可能性がある。いったん建物の内部に入られると、追い出すのは難しく、暖房で暖かくなるたびに室内へ出てくることになります。真冬に部屋でカメムシを見つけるのは、秋のうちに入っていた個体が動き出したものです。
洗濯物に付くのを減らす
この時期に外干しすると、取り込むときにカメムシごと室内へ持ち込むことになります。取り込む前に軽くはたく、夕方までに取り込む、ベランダの照明を点けない、といった対処で減らせます。大量発生の年は、その時期だけ部屋干しに切り替えるのが確実です。
白い洗濯物に多く付くという声がありますが、これは光に寄る性質と同じ理屈で説明できます。夕方以降、白い面は周囲より明るく見えます。
一匹だけ見つけたときはどうするか
室内で一匹見つけた場合、まずそれを潰さずに外へ出すことです。そのうえで、同じ部屋にほかにもいないか、窓のサッシ、カーテンの裏、天井の隅を見てください。越冬で入ってきた個体は単独ではなく、同じ経路で複数入っていることが多いためです。
放置してよいかというと、越冬中の個体は基本的に動かずじっとしているだけなので、人を刺したり家財を食べたりはしません。ただし暖房で活動を再開すると飛び回り、刺激を受けて臭いを出します。見つけた時点で外に出しておくほうが結果的に楽です。
やってはいけないこと
第一に、潰さないこと。臭いが部屋に残り、衣類や寝具に付くと落としにくくなります。第二に、掃除機で吸うなら紙パック式で、吸った後はすぐにパックごと処分すること。吸い込んだ個体が中で臭いを出すと、以後しばらく排気が臭います。第三に、屋外の壁一面に殺虫剤を撒くこと。飛んでくる個体は次々に入れ替わるため、撒いた分だけ減るわけではありません。効くのは光を減らすことと、隙間を塞ぐことです。
ペットボトルに洗剤を薄めた水を入れて落とし込む方法は、臭いを出させずに捕まえる手段として有効です。壁に張りついている個体を、下から口を当てて落とすようにします。
緑と茶色では、どちらが臭いか
住まいでよく見る三種で比べると、臭いが強いのは茶褐色のクサギカメムシです。光沢のある緑色のツヤアオカメムシは臭いが弱く、小さくて丸いマルカメムシはほぼ臭いません。つまり屋内に大量に入ってくる種類が、いちばん臭いが強いということになります。外壁に大量に張りついている緑色のカメムシは、数の割に臭いの被害は大きくありません。
卵はどこにあるのか
カメムシは植物から吸汁して育つため、産卵するのは餌のある屋外の植物です。光に寄ってくる種類は、夏のあいだ山のスギやヒノキで繁殖しています。つまり住宅で見かける大量の個体は、その家で生まれたものではなく、外から飛んできたものです。
ここが、家の中で増えるゴキブリやネズミとの決定的な違いです。家の中を掃除しても発生量は減りません。減らせるのは、寄ってくる数と、入ってくる数です。庭やベランダに寄主となる植物があれば別ですが、大量発生の主因は敷地の外にあります。
発生時期のまとめ
| 時期 | 起きること | やること |
|---|---|---|
| 春 | 越冬した成虫が活動を再開する | 前年に入られた場所の隙間を塞ぐ |
| 夏 | 山でスギ・ヒノキの実を吸って繁殖する | この年の実の付き方が秋の量を左右する |
| 9月中下旬〜10月 | 山から分散。夕方から夜に光へ集まる | 屋外照明を減らす。LEDへ替える |
| 10月以降 | 越冬場所を求めて屋内へ侵入 | 南向きの壁面と開口部を塞ぐ |
| 冬 | 壁の中や天井裏で越冬。暖房で動き出す | 潰さず外へ出す |
まとめ
秋の大量発生は、光に寄せられて外壁に集まる緑色のカメムシと、越冬のために屋内へ入る黒〜茶色のカメムシの二種類に分かれます。前者に効くのは光を減らすことで、誘引力は水銀灯、蛍光灯、LEDの順に弱くなります。後者に効くのは、冷え込みが始まる前に着地面と隙間を押さえることです。
当たり年になるのは、前年が暖冬で越冬成虫が多く、スギ・ヒノキの実が豊作で、夏から秋に大きな風雨がなかった年です。春の花粉が多い年は、その後のカメムシも多くなる傾向があります。そして発生源は敷地の外にあるため、家の中を掃除しても数は減りません。減らせるのは、寄ってくる数と入ってくる数だけです。
出典
伊丹市昆虫館「大量発生しているツヤアオカメムシの生態と対策の解説」(https://www.itakon.com/blog/tyaokmms)/大日本除虫菊株式会社「カメムシ大量発生 〜当たり年の秋は、壁や廊下がカメムシだらけ」(https://note.com/kincho_jp/n/n0f8beca43bf1)
