庭や公園、校庭の日当たりのよい地面で、黒いアリが忙しく行き来している。夏には、羽の生えたアリが家の中に入ってくることもある。こうした場面でよく見られるのがクロヤマアリです。
北海道から九州まで広く分布する、日本で最も身近なアリの一つです。
本記事では、クロヤマアリの生態を客観的に解説します。
クロヤマアリとは?大きさ・見た目の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | クロヤマアリ(黒山蟻) |
| 学名 | Formica japonica |
| 分類 | 昆虫綱 ハチ目 アリ科 ヤマアリ亜科 |
| 体長 | 働きアリ約5mm(4〜6mm)、女王約10mm |
| 見た目 | 全体が黒色。短い毛が密に生えているため、光沢のない灰黒色に見える |
| 分布 | 北海道〜九州。朝鮮半島、中国、サハリン、シベリア東部など |
クロヤマアリの生態|巣・エサ・1年の暮らし
巣:日当たりのよい地面の下
日当たりのよい場所の地中に巣を作り、地下3m近くに達することもあります。裸地や草地、公園や校庭など、開けた場所を好みます。1つの巣には、1〜数匹の女王と数千匹の働きアリが暮らしています。
エサ
アブラムシの出す甘い液(甘露)や花の蜜を集めるほか、昆虫の死がいなどの小さな動物を巣に運びます。肉食性の強いアリとされています。
1年の暮らし
羽アリは6〜8月ごろに現れ、7月ごろの日中に結婚飛行をします。一度に大量に飛び出すことはないとされています。
クロヤマアリが家に入ってくる理由
夏に発生した羽アリが、屋内に入ってくることがあります。アリ全般の対策として、食品の保管や床・台所の清掃が案内されており、食べこぼしなどのエサがあると室内に入りこむ原因になります。
クロヤマアリによる被害・影響
主な困りごとは、家の中への侵入や、夏の羽アリの発生です。柱や土台の木材を食べるシロアリとは別の仲間で、木材を食べて家を傷める虫ではありません。
クロヤマアリがいるサイン
| サイン | 見られる場所・特徴 |
|---|---|
| 地面の小さな穴と盛り土 | 日当たりのよい庭、駐車場のすき間 |
| 黒いアリの行列 | 庭から玄関・掃き出し窓まわり |
| 夏の羽アリ | 6〜8月ごろの日中 |
クロヤマアリの対策と予防
アリ全般について、次のような対策が案内されています。
- 食品は密封容器か冷蔵庫で保管し、床や台所を清潔に保つ
- 侵入口になるすき間は、シーリング剤などでふさぐ
- ベイト剤(毒エサ)を巣の入口や行列の近くに置き、働きアリに巣へ持ち帰らせる
- ベイト剤を置くときは、行列を刺激しない
クロヤマアリの豆知識
サムライアリに子どもを奪われる
サムライアリは、クロヤマアリの巣から幼虫やさなぎを奪っていきます。奪われた子は成虫になると、サムライアリの巣で働かされます。この「奴隷狩り」は夏のあいだ続き、1回で数百匹を奪うとされています。
クロヤマアリの生存戦略
地下深くまで続く巣と、数千匹の働きアリによる分業で暮らしています。アブラムシの甘露と昆虫の死がいの両方を利用することで、さまざまな環境で食べ物を確保しています。
生態系での役割
昆虫の死がいなど小さな動物を巣に運んで食べるほか、アブラムシの甘露を利用したり、サムライアリに利用されたりと、ほかの生き物とのつながりが多いアリです。
建物診断の視点
庭と室内の境目になる掃き出し窓や玄関、基礎まわりのすき間は、アリの侵入口になりやすい場所です。行列の向かう先をたどると、侵入口と巣の位置の見当がつきます。
クロヤマアリの危険度評価
※地域・環境により変動する相対的な目安です。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 人との接触 | ★★★★★(庭や公園など最も身近なアリの一つ) |
| 家屋への被害 | ★☆☆☆☆(木材を食べることはない) |
| 室内への侵入 | ★★★☆☆(エサを探して入ることがある) |
| コロニーの規模 | ★★★☆☆(数千匹) |
| 対策の難易度 | ★★☆☆☆(ベイト剤とすき間対策が中心) |
家に出る他のアリ・ヒアリとの見分け方
| 種類 | 見分けるポイント |
|---|---|
| クロヤマアリ | 働きアリ約5mm。全体が黒く、光沢がない |
| トビイロケアリ | 働きアリ2.5〜3.5mm。全体に黒褐色。砂粒で覆った通り道を作る |
| アミメアリ | 約2.5mm。頭と胸は茶褐色で網目模様。決まった巣を持たず集団で移動する |
| ヒアリ(特定外来生物) | 体長2.5〜6mm。頭と胸は赤褐色、腹部は黒褐色で、全体に光沢がある |
環境省の資料では、「体全体が黒く光沢がない」アリはヒアリではないとされています。
