秋になると、干した洗濯物や布団、家の壁に小さな丸い虫がびっしり付いている。その正体の多くはマルカメムシです。体長5mmほどと小さく、一見するとテントウムシのような丸い虫ですが、れっきとしたカメムシの仲間で、触るとにおいを出します。
この記事では、自治体・県の病害虫防除所・研究機関の資料で確認できた事実をもとに、マルカメムシの見分け方、家に来る理由、入れないための対策を解説します。
マルカメムシの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名・学名 | マルカメムシ(Megacopta punctatissima) |
| 大きさ | 約5mm(埼玉県・名古屋市・牛久市) |
| 色・形 | 黄銅色〜緑がかった褐色。丸く厚みのある形 |
| 分布 | 本州から屋久島(産業技術総合研究所、2007年) |
| エサ | クズ・フジ・ハギなどマメ科の植物、ダイズ |
| 発生 | 成虫で越冬し、年1世代(埼玉県) |
| 家に来る時期 | 秋(越冬場所を探す)と春(越冬明け) |

見分け方|小さく丸い、テントウムシのようなカメムシ
埼玉県は体長5mm内外の黄銅色の丸い形、名古屋市衛生研究所は体長約5mmで緑がかった褐色の丸い形と説明しています。茨城県牛久市の広報では「5mmくらいで茶色」とされていて、見る人や光の当たり方で茶色にも緑にも見えます。
一般的なカメムシのような角ばった五角形ではなく、背中が丸く盛り上がっているのが特徴です。そのため甲虫と間違えられやすいのですが、においを出すことと、吸う形の口を持つことがカメムシの仲間である証拠です。
幼虫は毛深く見え、成虫を小さくしたような形をしています(クレムソン大学の資料)。
生態|クズのある場所で育つ
エサはクズ・フジ・ハギなどのマメ科植物
千葉市保健所によると、マルカメムシはクズ・フジ・ハギなどマメ科の雑草や農作物を食べます。埼玉県は、クズやフジの新芽で簡単に見つけられるとしています。名古屋市は、空き地や河川敷、線路の脇のクズで発生すると説明しています。
家のまわりにクズが茂った空き地や斜面、フジ棚があると、そこが発生源になります。
年に1回、成虫で冬を越す
埼玉県によると、マルカメムシは成虫で冬を越し、年に1世代を過ごします。ダイズの生育の初めごろから飛んできて、卵を産みながら成虫と幼虫が長い期間、茎や葉の汁を吸います。
ダイズの害虫ではありますが、実を直接吸うカメムシに比べると被害は少ないとされています(埼玉県・島根県)。
赤ちゃんは母親が残した「細菌カプセル」を吸って育つ
マルカメムシのメスは、卵と一緒に褐色の小さな粒(共生細菌カプセル)を産み付けます。孵化した幼虫はこのカプセルを吸い、腸の中にすむ共生細菌を受け取ります。産業技術総合研究所の研究では、この細菌がないと正常に育たず、繁殖もできないことがわかっています。
さらに同研究所は、ダイズの害虫であるマルカメムシと、ほとんど害を出さない近い仲間のタイワンマルカメムシとで共生細菌を入れ替える実験をしました。すると、ダイズの上での卵の孵化率がそっくり逆転しました。害虫になるかどうかを、虫自身ではなく共生細菌が決めていることを示した研究として知られています(2007年)。
なぜ家や洗濯物に来るのか
名古屋市によると、マルカメムシは秋に越冬場所を探して移動するときに家の中に入り込んだり、干した洗濯物や布団に付いたりします。川崎市の資料では、10〜11月ごろに日当たりのよい壁に飛んできて屋内に入り、春先に野外へ戻るとされています。
千葉市保健所は、カメムシが集団で飛ぶ時期を二つ挙げています。4〜6月は越冬明けにエサの植物を探す時期、9〜11月は越冬場所へ移る時期です。どちらも晴れて暖かい日に起こり、このときに洗濯物や家の壁に付きます。

人への影響|におい・肌の着色
名古屋市は、家屋への侵入や洗濯物・布団への付着によって、悪臭の被害を起こすとしています。
肌への影響もあります。日本農村医学会雑誌に掲載された前田学氏の論文(2021年)は、裸足でマルカメムシやクサギカメムシを踏むと、5分ほどで肌が橙色に色づき、48時間後には消えていく傾向があるという報告を紹介しています。色が付くだけでなく、かぶれる人もいるため、素手で触ったりつぶしたりしないのが基本です。
家に入れない対策と、入ったときの対処
秋は外干しを控え、隙間をふさぐ
堺市は、10〜11月は外干しをやめて室内干しにすること、マルカメムシなどは2〜3mmの隙間から入るため、網戸や窓の隙間を隙間テープでふさぐことを勧めています。千葉市は、家の周りの雑草を刈ってエサを減らすことを挙げています。
クレムソン大学の資料も、クズやフジを秋の前に刈り取ると効果があるとしています。家のまわりにクズが多い場合は、夏のうちに刈っておくと秋の飛来を減らせます。
見つけたら、つぶさずに外へ
牛久市は、屋内に入ったマルカメムシはティッシュでやさしく包んで外に逃がすよう案内しています。つぶすとにおいと色が付くため、大量にいる場合は掃除機で吸い取る方法もあります(クレムソン大学)。
アメリカで「クズの虫」として広がった
マルカメムシの仲間は、2009年にアメリカ・ジョージア州アトランタ近くのクズで初めて見つかり、2013年までにミシシッピ川より東、オハイオ川より南のすべての州に広がりました(ケンタッキー大学)。現地では「kudzu bug(クズの虫)」と呼ばれ、ダイズの害虫として、また家で冬を越そうとする厄介な虫として問題になっています。
細川氏らの研究(PLoS ONE 2014年)は、アメリカに入った集団が九州のマルカメムシに由来することを、遺伝子の解析で示しました。
他のカメムシとの見分け方
大きさは各県の病害虫防除所・名古屋市の資料によります。
よくある質問
- なぜ洗濯物に付くのですか?
-
秋に越冬場所を探して移動するときに、干した洗濯物や布団に付きます(名古屋市・牛久市)。10〜11月は室内干しにすると防げます(堺市)。
- どこから来るのですか?
-
近くのクズ・フジ・ハギなどマメ科の植物で育ったものが飛んできます(千葉市・名古屋市)。
- 踏んだら足が橙色になりました。大丈夫ですか?
-
カメムシの分泌物による色素沈着で、時間とともに消えていく傾向があると報告されています(前田2021)。かゆみや腫れが出たら皮膚科を受診してください。
- 殺虫剤で駆除したほうがいいですか?
-
家の中に入った数匹なら、ティッシュで包んで外に出すか、掃除機で吸い取る方法があります。外壁にたくさん付く場合は、侵入を防ぐ対策とあわせてカメムシ用の殺虫剤を使います。
まとめ
マルカメムシは体長5mmほどの丸いカメムシで、クズなどマメ科の植物で育ち、春と秋に集団で飛んで洗濯物や家の壁に付きます。秋は外干しを控え、2〜3mmの隙間をふさぎ、家のまわりのクズを刈ることが対策の基本です。見つけたらつぶさずに外へ出してください。大量発生したときの対処はカメムシの大量発生対策、カメムシ全般はカメムシの生態もあわせてご覧ください。
出典
- 埼玉県「大豆のカメムシ類」(PDF)
- 名古屋市衛生研究所「カメムシ類(2)」
- 千葉市保健所「カメムシ」
- 川崎市「カメムシ」(PDF)
- 広報うしく 2023年12月1日号(PDF)
- 堺市「カメムシ」
- 島根県病害虫防除所「ダイズのカメムシ類」
- 産業技術総合研究所「共生細菌による昆虫の害虫化の発見」(2007)
- 前田学「カメムシによる皮膚障害の解析」日本農村医学会雑誌70(4) 2021(PDF)
- Hosokawa et al. (2014) PLoS ONE 9:e89107
- University of Kentucky ENTFACT-154 “Kudzu Bug”(PDF)
- Clemson University HGIC “Kudzu Bugs Around the Home”
- AIST “Obligate symbiont involved in pest status of host insect”(2007)
- Fukatsu & Hosokawa (2002) Applied and Environmental Microbiology 68(1):389-396
