殺虫剤のパッケージで「ブロフラニリド」という聞き慣れない成分名を見つけて、「新しい成分らしいけれど、本当に効くの?」「人やペットがいる部屋で使っても大丈夫?」と気になって調べている方も多いのではないでしょうか。
ブロフラニリドは、ここ数年で家庭用の殺虫剤にも使われ始めた比較的新しい殺虫成分です。この記事では、害虫駆除を生業とする立場から、メーカーの技術資料や国の評価書など、確認できた一次情報をもとに、ブロフラニリドの仕組み・特徴・安全性をできるだけ正直に解説します。配合されている代表的な市販商品も紹介しますので、商品選びの参考にしてください。
ブロフラニリドとは|どんな殺虫成分か
ブロフラニリド(英名: broflanilide)は、三井化学アグロ株式会社(現・三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社)が創製した殺虫成分です。「テネベナール」という商標で呼ばれることもあり、製品のパッケージに「テネベナール(一般名:ブロフラニリド)」と書かれているのはこのためです。

開発の出発点になったのは、同社の殺虫剤フルベンジアミドでした。開発者らの論文(Katsuta et al., Journal of Pesticide Science, 2019)によると、フルベンジアミドを手がかりに構造を組み替えて「メタジアミド」と呼ばれる独特の構造にたどり着き、最適化を重ねてブロフラニリドが生まれています。
主な経緯と用途は次のとおりです。
- 2014年:三井化学アグロとBASF社が独占的グローバルライセンス開発契約を発表。2017年には長期商業化契約を締結(三井化学のニュースリリース)
- 2020年9月:国内で農薬として登録(ブロフレアSC 第24422号ほか。農林水産省・FAMICの審査報告書)。ブロフレアSCは2021年3月に販売開始
- 2021年:ブロフラニリドを含むゴキブリ用散布剤「ベクトロンFL」が防除用医薬品として承認され、同年10月に防除業者向けに販売開始
- 2024年:アース製薬が、ブロフラニリドを有効成分とする家庭用の防除用医薬部外品を発売(同社によると国内初の承認)
三井化学のリリースでは、用途として野菜・果樹・穀類などの農業用途に加え、住宅地での害虫駆除、シロアリ、アリ、ゴキブリ、ハエ、蚊といった非農業・衛生害虫分野も挙げられています。また消費者庁の資料によれば、国内では鶏舎内のワクモ(鶏につくダニ)駆除を目的とした動物用医薬品としても承認されています。
ブロフラニリドの作用機序|なぜ虫に効くのか
ブロフラニリドが作用するのは、虫の神経にある「GABA(ギャバ)受容体」です。GABAは神経の興奮を鎮める役割をもつ伝達物質で、GABA受容体はそのブレーキ信号を受け取ると塩化物イオン(クロライドイオン)を神経細胞に取り込み、興奮を抑えます。
農林水産省の審査報告書や食品安全委員会の評価書では、ブロフラニリドは「昆虫のGABA受容体に作用し、クロライドイオンの神経細胞への流入を阻害することにより殺虫効果を示す」と説明されています。神経のブレーキが利かなくなることで、虫は正常に動けなくなり、やがて死に至ります。
殺虫剤の作用の仕組みを国際的に分類しているIRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)の分類では、ブロフラニリドはグループ30「GABA作動性塩化物イオンチャネルアロステリックモジュレーター」に分類されています。「アロステリック」とは、GABAそのものがくっつく場所とは別の場所に結合して、受容体の働きを変えるという意味です。グループ30は2017年に新設されたグループで、三井化学のリリースでは、ブロフラニリドは当時この新グループに分類される唯一の有効成分とされていました。
「選択毒性」が安全性のカギ
人や哺乳類にもGABA受容体はありますが、虫のGABA受容体(RDLと呼ばれるタイプ)とは構造が異なります。殺虫剤が「虫にはよく効いて、人や動物には比較的影響が出にくい」性質を選択毒性といい、ブロフラニリドについても、昆虫のRDLとヒトのGABA受容体・グリシン受容体の間で選択性が生じるしくみを調べた研究が報告されています(Nakao, Pest Management Science, 2021)。
実際の安全性評価については、後半の「安全性」の章で国の評価書の内容を紹介します。
ブロフラニリドが注目される理由|抵抗性害虫にも効く
ブロフラニリドが注目されている最大の理由は、既存の殺虫成分が効きにくくなった害虫にも効果が期待できる点です。
ゴキブリやトコジラミ、農業害虫の一部では、同じ系統の殺虫剤を使い続けた結果、薬剤が効きにくくなった「抵抗性」の集団が問題になっています。三井化学のリリースでは、ブロフラニリドは「全く新しい作用性を持つ殺虫剤で、既存剤に抵抗性を持つ害虫にも有効」とされています。
家庭用製品でも、アース製薬は「従来のピレスロイド系の薬剤が効きにくいゴキブリやトコジラミ」を薬剤抵抗性ゴキブリ・スーパートコジラミと定義し、ブロフラニリド配合製品はそれらにも効くと案内しています。また、防除業者向けの「ベクトロンFL」について、メーカーは有機リン系・ピレスロイド系・カーバメート系に続く「50年ぶりの新系統ゴキブリ用散布剤」と位置付けています。
害虫駆除の現場でも、薬剤抵抗性の問題は切実です。チャバネゴキブリのように飲食店などで世代交代を繰り返す種類や、トコジラミのようにピレスロイド系が効きにくい集団が知られている害虫では、作用の仕組みが異なる成分を選択肢に持てることに大きな意味があります。
もうひとつの特徴が、効果の持続性です。アース製薬はブロフラニリドを「光や熱に強い」成分と説明しており、同社の製品では「アース史上効果最長」「効果の期間 約1年」といった表示がされています(効果の期間は使用環境や害虫の種類によって異なる旨の注釈つき)。ベクトロンFLについても、メーカーは3か月以上の残効をうたっています。
ブロフラニリドは揮発する?すぐに効く?
部屋に撒く成分だけに、「空気中に漂い続けないか」も気になるところです。環境省の資料によると、ブロフラニリドの蒸気圧は25℃で9×10−9 Paと非常に低く、常温ではほとんど揮発しない性質です。水にも溶けにくく(20℃の純水で0.71 mg/L)、油になじみやすい性質(オクタノール/水分配係数 logPow=5.2)をもっています。
家庭用のくん煙剤や1プッシュ式スプレーは、成分を微粒子にして部屋中に行き渡らせ、床や壁、すき間に付着させて効果を持続させる設計です。だからこそ製品の説明書では、使用後は換気すること、食品や食器、ペットや観賞魚にかからないようにすることが求められています。「揮発しにくい=使用直後から気にしなくてよい」という意味ではないので、使用方法は必ず守ってください。
効き方については、アース製薬が「イヤな虫用」の1プッシュ式スプレーについて、虫が暴れずに静かに死ぬといった趣旨の説明をしています。また、同社の「シロアリ・羽アリ撃滅ジェット」のQ&Aでは、成分を体に付けたシロアリが巣に戻り、グルーミング(体をなめ合う習性)によって巣の仲間も死ぬ「巣の仲間にも効く」効果が説明されています。
ブロフラニリドの安全性|犬・猫・人体への影響
人体への影響
ブロフラニリドは農薬として国の審査を受けており、食品安全委員会の農薬評価書が公開されています。評価書の主な内容は次のとおりです。
- 一日摂取許容量(ADI):0.017 mg/kg体重/日(ラットの2年間慢性毒性/発がん性併合試験の無毒性量1.7 mg/kg体重/日を安全係数100で除して設定)
- 急性参照用量(ARfD):単回経口投与で生じる可能性のある毒性影響が認められなかったため、「設定する必要がない」と判断
- 神経毒性、繁殖能への影響、催奇形性、遺伝毒性:いずれも「認められなかった」
- 主な影響:体重増加抑制、貧血(ラット)、副腎・卵巣・子宮への影響など
正直にお伝えしておくべき点として、ラットの長期試験では腫瘍の発生が認められています。食品安全委員会は、この腫瘍は遺伝毒性によるものとは考えにくく、閾値(これ以下なら影響が出ない量)を設定できると評価しました。一方、アメリカ環境保護庁(EPA)は、ラットの精巣(ライディッヒ細胞)や卵巣の腫瘍をもとに「ヒトに対しておそらく発がん性がある(Likely to be Carcinogenic to Humans)」に分類したうえで、登録された使い方での食事・職業・住宅でのばく露によるリスクは無視できる範囲と結論づけています。
急性毒性については、EPAは原体の経口・経皮・吸入の急性毒性をいずれも最も低い区分(Toxicity Category IV)としています。国内でも毒物・劇物には該当しません。
つまり、「製品の使用方法を守って使う範囲では、公的機関がリスクは許容範囲と評価している成分」というのが正確な理解です。誤って口に入れたり、皮膚や目についたりしないように扱うのは、ほかの殺虫剤と同じです。なお、アース製薬は「シロアリ・羽アリ撃滅ジェット」について、妊婦の使用は特に問題ないとしつつ、気になる場合は使用を控えるよう、子どもには使用させないよう案内しています。
犬・猫・ペットへの影響
犬や猫などのペットに対するブロフラニリドの影響について、家庭用製品向けに具体的な数値を示した公的資料は確認できませんでした。そのため、ここではメーカーの使用上の注意を紹介します。
アース製薬のゴキブリ・トコジラミ用1プッシュ式スプレーでは、飲食物・食器・飼料・おもちゃ、観賞魚や小鳥などのペットにかからないようにすること、観賞魚やエビの水槽、昆虫の飼育ケースがある部屋では使用しないことが求められています。くん煙剤タイプでも、換気が終わるまで小鳥やペットを部屋から出すこと、水槽はエアーポンプを止めてビニールで密閉するか部屋の外に出すことが指示されています。
特に注意したいのが魚やエビなどの水生生物です。農林水産省の審査報告書では、ブロフラニリドは水産動植物(甲殻類)に影響を及ぼすおそれがあるとされています。熱帯魚やエビ、カメなどを飼っているご家庭では、メーカーの指示どおり水槽の対策を徹底してください。
ブロフラニリドとフィプロニルの違い
ブロフラニリドとよく比較されるのが、ゴキブリ用ベイト剤やシロアリ防除でおなじみのフィプロニルです。どちらも虫のGABA受容体に作用する成分ですが、効き方の細部は異なります。

| 項目 | ブロフラニリド | フィプロニル |
|---|---|---|
| 系統 | メタジアミド系 | フェニルピラゾール系 |
| IRAC分類 | グループ30(GABA作動性塩化物イオンチャネルアロステリックモジュレーター) | グループ2B(GABA作動性塩素イオンチャネルブロッカー) |
| 受容体での作用部位 | サブユニットの境目付近(膜貫通領域M3付近)にあるアロステリック部位 | イオンが通るチャネルの孔(ポア)部分 |
同じGABA受容体でも「くっつく場所」が違う
IRACの分類では、フィプロニルはGABA受容体のチャネルを塞ぐ「ブロッカー」、ブロフラニリドは別の場所から働きを変える「アロステリックモジュレーター」として、別のグループに分けられています。
研究でも、ブロフラニリドの活性体(脱メチル体)は受容体の膜貫通領域M3付近に作用部位をもち、フィプロニルなどが作用するチャネルの孔とは異なることが報告されています(Zhang et al., PLOS Genetics, 2023 ほか)。同論文では、メタジアミド系やイソキサゾリン系は、環状ジエン系(ディルドリンなど)やフェニルピラゾール系と交差抵抗性を示さないと述べられています。また、M3付近の変異をもつショウジョウバエはブロフラニリドに強い抵抗性を示した一方、フィプロニルへの感受性はそのままでした。
三井化学クロップ&ライフソリューションも、ブロフラニリドが効く害虫としてフェニルピラゾール系に抵抗性をもつ害虫を挙げています。
使い分けのイメージ
作用部位が違うので、同じ系統の成分ばかりを使い続けるより、系統の異なる成分を組み合わせたりローテーションしたりするほうが、抵抗性の発達を抑えやすいと考えられています。ただし、どちらが「上」というわけではありません。商品のタイプ(ベイト剤・スプレー・くん煙剤)や対象害虫、使う場所に合わせて選ぶのが基本です。
メタジアミド系という分類について
「メタジアミド系」は、ブロフラニリドのために生まれたと言ってもよい新しい化学系統です。名前は、ベンゼン環のメタ位に2つのアミド結合をもつ構造に由来します。出発点になったフルベンジアミドは「ジアミド系」と呼ばれ、筋肉のリアノジン受容体に作用する成分ですが、構造を組み替えたブロフラニリドは、作用点がGABA受容体へと変わりました。開発者らの論文によると、ブロフラニリドはチョウ目、コウチュウ目、アザミウマ目など幅広い害虫に効果を示します。
IRACのグループ30には、ブロフラニリド(メタジアミド系)のほか、フルキサメタミドやイソシクロセラムといったイソキサゾリン系の成分も含まれています。イソキサゾリン系はペット用のノミ・マダニ駆除薬でも知られる系統で、いずれもGABA受容体のアロステリック部位に作用するという点で、同じグループにまとめられています。
ブロフラニリドをめぐる環境・規制の話
ブロフラニリドは、国内では農薬取締法・医薬品医療機器等法などのもとで、用途ごとに審査を受けて使われています。毒物及び劇物取締法の毒物・劇物には該当しません。一方で、環境面ではいくつか注意点があります。
- ミツバチ・蚕:農林水産省の審査報告書では、ミツバチと蚕に「影響がある」として、使用時の注意事項が定められています
- 水生生物:甲殻類など水産動植物に影響を及ぼすおそれがあるとされています。EPAも、河口・海洋の無脊椎動物について急性・慢性のリスクが懸念レベルを超えると評価しています
- 残留性:EPAによると、土壌や水中での代謝半減期は157〜2,198日と、数か月から数年のオーダーで残りやすい性質です
- 水質の基準:環境省の資料では、水質汚濁に係る農薬登録基準値として0.045 mg/Lが示されています
「長く効く」ことは裏を返せば「環境中に残りやすい」ということでもあります。家庭で使う場合も、余った薬剤を排水口や川に流さない、屋外で使う製品は池や水路にかからないようにする、といった基本を守ることが大切です。
ブロフラニリドが配合された代表的な市販商品
ここでは、メーカー公式ページでブロフラニリドの配合を確認できた家庭用製品を紹介します。同じシリーズでも品番によって成分が異なる場合があるため、購入時は必ずパッケージの成分表示を確認してください。
ゴキブリ・トコジラミ用
ゼロノナイト ゴキブリ・トコジラミ用 1プッシュ式スプレー 60回分(アース製薬)
ブロフラニリド0.75g/本(75mL)を配合した防除用医薬部外品。アース製薬によると、ブロフラニリドを有効成分とする家庭用防除用医薬部外品として国内初の承認製品です。空間に噴射するほか、冷蔵庫裏などのすき間にも使えます。
ゼロノナイトG ゴキブリ・トコジラミ用 くん煙剤 6~8畳用(アース製薬)
ブロフラニリド10%配合の第2類医薬品のくん煙剤。煙で部屋全体に成分を行き渡らせ、隠れたゴキブリ・トコジラミを駆除するタイプです。メーカーは「アース史上効果最長」と表示しています(侵入を予防するものではない旨の注釈あり)。
不快害虫(ムカデ・クモ・カメムシなど)用
ゼロノナイト イヤな虫用 1プッシュ式スプレー 60回分(アース製薬)
有効成分はブロフラニリド。アリやクモ、チャタテムシなど幅広い不快害虫が対象で、効果の期間は約1年と表示されています(効果の期間は使用環境や害虫の種類で異なる旨の注釈あり)。
ゼロノナイト イヤな虫用ジェット 450mL(アース製薬)
ブロフラニリドに、速効性のピレスロイド系成分フタルスリン・トランスフルトリンを組み合わせたエアゾール。ムカデ、ヤスデ、チョウバエなど60種以上の不快害虫が対象です。
1年バルサン水 6-8畳用(レック)
ブロフラニリド(メタジアミド系)とd・d-T-シフェノトリン(ピレスロイド系)を配合。火を使わず水につけるだけで始められるタイプで、ムカデ、クモ、カメムシ、ヤスデ、ゲジ、アリなどが対象です。
1年バルサン ワンプッシュ 80回(レック)
ブロフラニリド(メタジアミド系)とフェノトリン(ピレスロイド系)を配合したワンプッシュ式スプレー。カメムシ、ゲジ、アリ、チャタテムシなどへの持続効果が表示されています。
シロアリ・羽アリ用
アースガーデン シロアリ・羽アリ撃滅ジェット 480mL(アース製薬)
有効成分としてブロフラニリドを配合したシロアリ・羽アリ用スプレー。逆さ噴射やすき間用ノズルで床下や木材のすき間にも使え、メーカーは約1年の被害防止効果と「巣の仲間にも効く」効果を案内しています。
業者が使うブロフラニリド製剤
一般向けの市販品とは別に、防除業者が使う業務用製剤もあります。たとえば、ゴキブリ・ノミ・トコジラミ・イエダニ用の散布剤「ベクトロンFL」(ブロフラニリド5%、防除用医薬品)や、シロアリ駆除業者専用の土壌処理・木部処理用乳剤「エディクラ」(環境機器株式会社)などです。これらは専門業者が建物の状況に合わせて使う薬剤で、一般の方が購入して使うことは想定されていません。ヤマトシロアリやイエシロアリの本格的な防除では、こうした業務用薬剤による施工が中心になります。
市販品で効かないときはプロの施工も選択肢
ブロフラニリド配合の市販品は、抵抗性をもつゴキブリやトコジラミにも効果が期待できる選択肢です。ただし、くん煙剤やスプレーを使ってもしばらくするとまた虫が出る、発生源や侵入経路がわからない、床下や柱にシロアリ被害が疑われる──こうした場合は、市販品だけで解決するのは難しいことがあります。
特にトコジラミは、ベッドや家具のすき間に入り込むため薬剤が届きにくく、シロアリは床下全体の調査と土壌・木部への処理が必要です。被害の範囲を見極め、建物や生活環境に合った薬剤と施工方法を選ぶには、専門業者に相談するのが確実です。
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よくある質問
Q. テネベナールとブロフラニリドは違う成分ですか?
A. 同じ成分です。「ブロフラニリド」が一般名、「テネベナール」が三井化学クロップ&ライフソリューションの商標です。製品の表示では「テネベナール(一般名:ブロフラニリド)」のように併記されていることがあります。
Q. ブロフラニリドはフィプロニルより強いのですか?
A. 単純な強弱では比べられません。どちらも虫のGABA受容体に作用しますが、作用部位が異なり、IRACの分類でも別グループです。研究では、フィプロニルなどフェニルピラゾール系とは交差抵抗性を示さないと報告されているため、フィプロニル系が効きにくい虫への選択肢になりえます。
Q. 小さな子どもやペットがいても使えますか?
A. 製品ごとの使用方法と注意事項を守ることが前提です。くん煙剤や空間噴射タイプでは、使用中・換気が終わるまで人やペットは部屋の外に出し、食器やおもちゃ、ペットの食器にかからないようにします。観賞魚やエビの水槽がある部屋では、メーカーの指示どおり対策してください。
Q. 「効果1年」は本当に1年間虫が出ないということですか?
A. そういう意味ではありません。メーカーの表示には、効果の期間は使用環境や害虫の種類によって異なる、侵入を予防するものではない、といった注釈がついています。掃除で成分が取れたり、外から新しい虫が侵入したりすることもあるため、目安として考えてください。
Q. 市販のゴキブリ用ベイト剤(毒エサ)にもブロフラニリドは使われていますか?
A. 2026年10月時点で、ブロフラニリドを配合した国内の家庭用ゴキブリ用ベイト剤は、メーカー公式情報では確認できませんでした。国内の家庭用製品は、現在のところスプレーやくん煙剤タイプが中心です。
まとめ
- ブロフラニリド(テネベナール)は三井化学アグロが創製した、メタジアミド系という新しい系統の殺虫成分
- 虫の神経のGABA受容体に作用し、IRACでは新設のグループ30(アロステリックモジュレーター)に分類される
- フィプロニルと同じGABA受容体に作用するが、くっつく場所が異なり、既存剤に抵抗性をもつ害虫にも効果が期待されている
- 国の評価ではADI 0.017 mg/kg体重/日、神経毒性や遺伝毒性は認められていない。ただし長期試験での腫瘍や、水生生物・ミツバチへの影響には注意が必要
- 家庭用ではアース製薬「ゼロノナイト」シリーズやレック「1年バルサン」の一部などに配合されている
新しい成分だからといって過度に怖がる必要はありませんが、「新しいから安全」というわけでもありません。成分の性質を知ったうえで、製品の使用方法を守って使うことが何より大切です。市販品で解決しない場合は、無理をせず専門業者に相談してください。
